留学レベル: Graduate Diploma |
カレッジ: Chelsea College of Arts |
コース名: Graduate Diploma Graphic Design |
留学期間: 2021年9月~ |
早稲田大学文学部を卒業された後、企画として大手企業にお勤めされていた吉田さんのロンドン芸術大学(UAL)留学体験をお寄せいただきました。芸術系大学卒でない吉田さんがなぜデザイナーを目指して留学を決意されたのか、留学準備の様子や、進学先のコースについて詳しくお話を伺いました。
留学準備について
Q.英国留学を決心した理由やきっかけを教えてください。
小さい頃から絵を描くことが好きだったのですが、高校生の頃には美大に入れるほどの実力がないと思い、諦めていました。しかし、美術館で絵を観賞することや、気に入ったデザインのフライヤーを集めるのが好きで、ずっとその領域への憧れを持っていました。
社会人になり、全く美術やデザインとは関係ない営業や企画の仕事をしていたのですが、自分の中で徐々に違和感を持つようになり、改めて自分の人生で一番何をしたいかを考え直した時に、自分が向き合っていて一番楽しいと思えるものが「グラフィックデザイン」でした。
そこからは平日は夜20〜22時頃まで仕事をしつつ、土日は社会人向けのデザインスクールに通い始めました。初めはデザイン業界へ転職できればいいかと思っていましたが、この中途半端なスキルでは活躍できないと思っていたので、大学に入り勉強をしようと思いました。学部生時代に1年弱アメリカに留学していたこともあり、せっかくであれば自分の得意な英語を使って海外のグラフィックデザインの道を目指しました。
Q.なぜロンドン芸術大学(UAL)を選びましたか?
親の仕事の関係で小さい頃ロンドンに住んでいたので、いつかイギリスという国にまた戻りたいと思っていたこともあり、留学先はイギリスで基本的に考えていました。また学部時代に留学していたアメリカのボストンはあまり自分に合わず、ヨーロッパが良いとも考えていました。
その中でもロンドン芸術大学にしたのは、大学のレベルが高いこと、ロンドンにあることで様々な情報が入ってきやすいのではないかと思ったからです。イギリスにある他の大学も検討していましたが、当時は2年間勉強できるかどうかが自分の中でわからなかったため、1年のコースがあるUALを選びました。また日本出願事務局(beo)のサポートがあったことも大きいです。
ロンドンでの生活について
Chelsea College of Artsの校舎は煉瓦造りの歴史のある建物で、場所は比較的高級住宅地にあるため治安も良く、市内へ買い物や遊びにも行きやすいです。他のカレッジに比べると、こぢんまりとしてのんびりした印象を受けます。
世界各国から個性豊かな学生たちが集まっていることや、ロンドンという国際都市ということから、アメリカの大学にいた時よりもはるかにこちらの学生の方が、留学生に対してフレンドリーで、多様性を受け入れようとする優しさがあると思いました。英語がそれほど完璧ではなくても、クラスメイトと一緒に好きなアーティストやデザイナーの話で盛り上がれたり、お互いの作品を素直に褒めあったりできるので、前向きな気分で過ごすことができます。
また、大学側が学生向けに主催するソーシャルイベントも定期的に行われます。1人で参加する場合も、同じように1人で参加している学生と友達になることができるので、もし交友関係を広げたければ、勇気を出して積極的に参加することをお勧めします。基本的にインスタグラムをやっている学生が多いので、友達になる場合は「アカウント名教えて?」といったやり取りでつながることが多いです。
ロンドン芸術大学で専攻されたコースについて
Q.Chelsea College of Art & Design, Graduate Diploma Graphic Designはどんなことを学ぶコースですか?
基本的にはグラフィックデザインをベースとして、自分の興味のある研究やテーマに沿ってグループプロジェクトなどを行います。任意参加のIllustratorやPhotoshopのテクニカルな授業もありますが、ある程度技術スキルを持って入学している学生も多いため、技術スキルだけを学びたい方には向いていないと思います。可能であれば、入学前までに技術スキルはある程度習得しておいた方が、入学後の苦労は少ないかと思います。
一方で、チューターからはデジタルだけではなく「実際に手を動かして考える」ことの重要性も教えてもらえるため、プロトタイプを紙とハサミなどを使って制作する場面もあります。グラフィックデザインとは言っても、ロゴやフライヤーを作ることはあくまで最後の成果物でしかなく、そこにいたるまでのリサーチ方法や、思考法を中心に学ぶのでそこが一番学部生たちとの違いかと思います。
そのため、時には社会学の古典文献を課題図書として授業で読んだり、フィールドワークでロンドンの街中を歩いたりして、リサーチを行います。その過程で気づいた課題や、伝えたいメッセージをもとに、最後にビジュアルの成果物を制作するようなイメージです。そのため、成果物の美しさだけではなく、いかに最終成果にいたるまで研究・実験を行い、思考したかが重要であり、それに基づき評価も行われます。
Q.1週間のスケジュールを教えていただけますか?
基本的に、留学生は毎日1コマ以上の授業があります。1コマの授業は、約90分から180分の長さです。対面とオンライン授業の比率は1:1ですが、リモートで参加している学生のためにできるだけ授業は録画されていることが多いです。コロナのおかげで大学側のデジタル化が進んでいる印象です。
下記は、2021年前期の授業割です。
月曜日: (AM)担当チューターによるレクチャーまたはワークショップ (PM)チューターへの各自質問(任意参加)
火曜日: (AM)レクチャー(学部生向けのグラフィックデザインの授業へ参加することが可能) (PM)コミュニケーションの授業(デザインの領域におけるフェミニズムや西洋主義などの議論余地のあるトピックについて生徒同士で議論をする)
水曜日: (AM)Illustrator、Photoshopなどのテクニカルな授業
木曜日: (AM)レクチャーまたはディスカッション(テキスタイルデザインのGraduate Diplomaの学生と一緒に参加。) (PM)午前中のレクチャーやディスカッションをふまえ、少人数グループで感想や意見を交換
金曜日: (AM)Language Development(留学生向けの英語のサポート授業で、レポートの書き方や英語でのプレゼンテーションの仕方について学ぶ)
上記以外にも、ロンドン郊外への半日スクールトリップに行ったり、美術館に行って展示について観察したりする授業もあります。
英語での授業を1回で理解するのは大変なので、授業の録画があることで不明点を見返せるため非常に助かっています。
また、ただでさえ新しい地での生活によるストレスで疲弊している留学生にとって、オンライン授業があると少し気持ちも、身体的にもリラックスして授業に参加することができ、今の授業の割合はとても勉強しやすいと感じています。
Q.チューターはどんな方たちですか?
チューターはグラフィックデザイナーとして過去に大手企業などで働いていた女性の方です。勤務時間は週3回程度のため、何か質問がある時は、出勤時のみに相談することができます。レクチャーもわかりやすく指導してくれて、熱心なチューターです。
また、もう1名チューターをサポートする準チューターのような方もいて、チューターが不在の時は代わりに対応してくれます。デジタル系のデザイン領域で博士号を取得して現在UALで勤務されています。
Q.クラスメイトはどんな方たちですか?
30名ほどのクラスメイトのうち、15名ほどが中国からの留学生です。残り5名がイギリス人学生、3名が日本(うち1名は日本で育った韓国人学生)、2名がアメリカ、1名がアルゼンチン、1名がエジプト、1名がタイからの留学生です。基本的に、中国・日本以外の学生に関しては英語がネイティブレベルです。また、ジェンダーバランスでいうと、性別として男性は2名しかおらず、ほとんどが女性です。
Q.日本の大学(ご卒業された大学)と違うなと思ったことがあれば教えていただけますか?
基本的に日本の大学のように自分で授業を選択するというよりは、大まかなコースは決められています。その分、クラスメイトは毎回ほぼ同じなので自然と仲良くなりやすいです。
授業内では、自分の意見を発言することや対話を通してお互いの異なる意見への理解を深めることが重要視されており、わからないことや、自分が納得できないと思うことがあれば遠慮なく手を挙げて学生たちが発言する印象です。
これまで日本にいる時はあまり感じてこなかったのですが、こちらではグラフィックデザイン業界は、「白人の・西洋文化で育った・男性」によって発展されてきたという歴史的背景があるため、いかにそこを変えていくのか、といった社会的視点について議論するような場面も多くあります。
日本の美大に通ったことがないのでわからないのですが、大学の設備に関しては充実していると思います。フォトスタジオ、レタープリント、ライノプリント、リソグラフなどの様々な印刷機に限らず、ポッドキャストの収録用機器や映写機などもあり、レクチャーを受けた上で、自分の好きな時に使うことができます(一部予約必須の設備もあります)。
ロンドン芸術大学に留学をしてみて…
Q.留学を経験して得たこと・良かったことがあれば教えていただけますか?
日本にいる時と比べ物にならないくらい、これまでヨーロッパにて築かれてきた圧倒的なデザインの知識・知見を目の当たりにすることができます。同時に最先端のグラフィックデザインについても情報が入ってきやすいので、いかに日本で見てきたグラフィックデザイン業界が一部でしかないかを感じました。
Q.Chelsea College of Art & Design, Graduate Diploma Graphic Designに適している人やタイプなどがあれば教えていただけますか?
デザインに正解はないので、誰に答えを求めるのではなく、自分で考えて行動して、手を動かせる人。1つの凝り固まったアイディアやスタイルに固執せず、柔軟に様々なものに挑戦ができる人。グラフィックデザインが好きもしくは興味がある人に合っているのではと思います。いくらスキルや知識があったとしても、結局は好きというモチベーションには叶わないためです。
Q.ロンドン芸術大学日本出願事務局(beo)のサポートを受けて良かったことがあればぜひお聞かせください。
英語はある程度できるものの、仕事をしながら疲れた頭で長文の英語の手続きをするのは本当に大変だったので、日本出願事務局(beo)が随時手続きを対応してくれたのはとても助かりました。
また日本と違って、海外ではこういった手続きによくミスやエラーなどが発生し、それに自分の英語力で対応するのは無理だと思っていたので、何か困ったことがあったらすぐに担当の高橋さんに相談でき、尚且つスピーディに対応いただけたのは大変ありがたかったです。
そして仮に担当のカウンセラーの方がお休みであっても、別のカウンセラーの方が代わって対応をしてくださるので助かりました。ビザなどの手続きに関してもサポートに加入していたのですが、トラブルなく非常にスムーズに取得することができました。
Q.今後の展望、ご活動の予定などがあればぜひ教えてください。
グラフィックデザインの研究、勉強がとても楽しいので、このまま来年もUALのグラフィックデザインの修士コース(Camberwell)に進みたいと考えています。修士号を取得できれば、こちらでの2年間の就労ビザがおりるため、できればイギリスにてグラフィックデザイナーとして働きたいと思っています。
Q.これからロンドン芸術大学に留学を考えている方へのアドバイスやメッセージをお願いします!
UALの充実した環境や授業レベルの高さは世界有数だと思います。その分、授業についていくことは大変な場面もあるかと思いますが、「自分の心からやりたいと思えること」であれば突き進めると思うので、ぜひ頑張ってください。逆に、「まだ自分がやりたいことがわからない」といった迷いがある場合は、まずは自分がやりたいことを明確にし、徹底的にコースについて調べて、ミスマッチのないように慎重にコースを選んで準備することをおすすめします。本当にやりたい道に進むことができれば、その先はどんなに大変でも、楽しい学生生活を送れると思います!
ロンドン芸術大学日本担当官よりメッセージ:
ご自身の学歴や職歴と進学希望コースの関連性がなくても、自ら積極的に行動を起こしてご準備され、見事にオファーを獲得されたYoshidaさん。特に社会人の方はお仕事と並行しての留学準備となりますが、Yoshidaさんも平日は夜遅くまでお仕事、週末は社会人向けのデザインスクールに通われるなど大変だったかと思います。その分、現在ロンドンでとても充実した留学生活を送られているようで本当に嬉しく思っています。
Yoshidaさんのインスタグラムはでは、現地生活や大学の様子もアップされています。ロンドンへご留学予定の方、アート&デザイン分野でのご留学を検討されている方はぜひフォローしてくださいね!
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